著者は東京都大田区の男女平等推進センター「エセナおおた」のスタッフ。同センターでは講座を開いてもほとんど人が集まらず常に閑古鳥が鳴いているような状態でしたが、さまざまな工夫により平均で募集定員の3.3倍まで申込み者数を増やすことに成功しました。本書ではそのノウハウがかなり具体的に紹介されています。ジェンダー系に限らず、比較的硬いテーマのイベント・講座の企画を担当していて、いつも参加者集めに四苦八苦している行政やNPOのスタッフにお勧め。
著者によれば、講座に人を集めるポイントはたった二つ。ひとつは「いろいろな人々が抱えている課題を分類しターゲットを徹底的に絞るということ」、もうひとつは「そのターゲットの心に響くタイトルをつけるということ」。
市民活動団体がイベントをやるときには、往々にして「多くの人たちに知ってもらいたい」「誰にでも来てほしい」などと言いがちですが、著者曰く「誰にでも来てほしいは誰も来ない」。まー、まったくそのとおりですね。対象があまりはっきりしていないということは、その講座なりイベントの位置づけが定まっておらず、目的とするところも不明確ということですから、対象は明確にすべきです。
対象が決まれば広報の仕方や、イベントをやる日にちの設定も自ずと決まってきます。本書では「子育て中の母親」「若い父親」「男性」「年配者」などの対象ごとに、かなり具体的に攻略法が書かれています。そこだけコピーして貼っておいてもいいかも。
そして次は、ターゲットの心に響くタイトルをつけろとのことで、ダメなタイトル、よいタイトルというのがBefore/Afterのような感じで実例が紹介されていて、これもなかなか参考になります。
ちなみにダメな例はこんなもの。
1)法律、条令の文言や講座目的そのまんまのタイトル
『男女共同参画セミナー』
2)社会背景表現型
『男女共生社会を生きるわたし』
3)疑問を投げかけるタイトル
『今子どもに必要なことは?』
4)認知率の低い言葉を使っている
『職場で役立つアサーティブ(自己表現)トレーニング』
5)受講者の立場を否定するタイトル
『子どもに嫌われないための講座』
6)レッツ系
『人権を学びあおう』
7)人に言えないタイトル
『DV被害者セミナー』
3番、5番、6番あたりはありがちですね。疑問を投げかけるのではなく、講座に出たらどんなメリットがあるかをアピールするのが大事とのこと。
そしてこれが重要だと思ったのが、講座実施後の評価について。評価のポイントが具体的に挙げられています。
1)事前のプロセス…広報・宣伝やスタッフの役割分担について
2)結果の評価…どれだけの申込み・参加があったか。
3)アンケート回収率…満足度が低ければ回収率も低い。
4)受講動機と満足度
5)課題の抽出…今回の問題点とその改善策
イベントをやった後にはだいたいどこでも反省会を持つと思いますが、漠然と感想を言い合うのではなく、ポイントごとに評価できるとよいでしょう。
あとこの本を読んで感心したのが、著者たちは講座の実施後に受講者に対して事後調査をしたということ。再就職セミナーを行なった後、本当に講座が役立っているか確認するために何ヶ月か後に受講者一人一人に電話したそうです。
○○養成講座などのように銘打ちながら、受講者がその後どうなったかまでは調べないケースがほとんどでしょう。講座が本当に効果のあるものにするためには、そういうところまでやらないといけないですね。
ジェンダー系以外の分野でも十分参考になる一冊。まわりの人にもぜひ薦めようと思います。
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人が集まる !行列ができる !講座、イベントの作り方 (講談社+α新書 344-1C) 牟田 静香 講談社 2007-04-20 by G-Tools |
著者はライフハック系ブログ「シゴタノ!」の運営者。脱・3日坊主のしかけとして、ものごとを継続し、習慣化していく方法を体系的に説明しています。
この本では継続には
1.続ける系
2.ためる系
3.マスター系
の3タイプがあるとし、それぞれの特徴に応じた対策を紹介しています。
続ける系は早起きや筋トレなどで、最初にパワーをかけて定着させる必要があり、いったん習慣にしてしまえばあとは続けるのが楽という特徴があります。よって、課題はいかに最初に定着させるかで、「例外」を乗り越えることがポイントとのこと。
ためる系の例にはダイエットや小遣い帳が挙げられてます。取りかかるのが簡単で、続けた成果が目に見えやすいというのが特徴です。課題となるのはリバウンド。これくらいいいかと思って自分を甘やかすと、それまでためた成果が一気に失われたりすることもあります。それを避けるには、ためた成果(収穫)を確認できることがポイントだそうです。
そして最後がマスター系。マスター系は試験勉強や英会話など、続けることよりマスターすることが目的という特徴があります。課題は努力の量に比べて成果が実感できないスランプに陥ること。最小の努力でいかに最大の成果を引き出すか、レバレッジすることが重要になるとのこと。
継続力をモノにするには「時間」と「やる気」をコントロールすることが大事とのことで、そのための7つのルールが紹介されています。
1.時間の確保を最優先させる
2.自分をあてにしない
3.現在を最も高く評価する
4.やりたいと思ったら記録しておく
5.予定外を受け入れる
6.同志を巻き込む
7.自画自賛でやる気をアップさせる
どれも重要なポイントですが、3番めの項目は常に意識しておかないといけないですね。ついつい、未来は時間が無限にあるように感じられますが、そのうちやろうと思っていることは往々にしていつになってもやらないものです。未来に期待しすぎず、まずは今からという姿勢が必要でしょう。
4章以降でタイプ別に攻略法が紹介されており、具体的な手段もいろいろ解説されています。その中でもこれはやるようにしようと思ったのは、「プランBを用意する」ということ。プランBとは、スパイ映画などでよく出てくる言葉で、当初の計画が失敗したときのために予め用意しておく代替手段のことだそうです。
毎日これをやろうと思っていても何らかの理由で妨げられることもあります。そういう場合に代わりにやることを予め用意しておくと継続が途切れなくてよいですね。
あと、この本で紹介されていて、これは使えそうと思ったサイトが2つ。
睡眠時間を記録するサイト | ねむログ
「ひとこと朝宣言」とは? - 朝時間.jp
さてさて、早寝早起きとか、英会話とか、ブログとか継続しようとしてなかなか続いていないことがけっこうあるのですが、この本を読んだ成果をあげることができるでしょうか。あまり欲張りすぎないことがポイントのようですね。
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そろそろ本気で継続力をモノにする! 大橋 悦夫 日本能率協会マネジメント 出版情報事業 2007-08-23 by G-Tools |
日本中の多くの自治体を悩ますゴミ問題。ある町では、増え続けるゴミと、ゴミ焼却にともなうダイオキシンの問題を解決するために新型で高性能の大型ゴミ焼却炉の導入を決定した。
ゴミの増加にも対応できるし、ダイオキシンも発生させないということで関係者が喜んでいたのも束の間、新たな問題に直面した。この新型焼却炉、高温を保つため24時間ゴミを燃やし続けなくてはならず、常に大量のゴミを必要とするのである。住民にリサイクル意識も根付きはじめ、ゴミの増加に歯止めがかかったところで、今度は「焼却炉を動かし続けるためにゴミが足らなくなる」という問題が出てきたのだ。
このゴミ問題の事例は、システム思考を理解しやすくするために自分で作った事例ですけれど、決して架空の話ではなく、多くの自治体で実際に起きていることのようです。少し前の日経新聞のエコノ探偵団でもこの問題が取り上げられていました。それで、今まで分別していたプラスチックゴミを燃えるゴミの方にまわして、焼却炉で燃やすゴミを増やすなどの対応がされているようですね。焼却炉を動かし続けるためにゴミを増やさないといけないというのだから、本末転倒なことが起きているのです。
ゴミの問題に限らず、ある問題を解決しようとしたら、また別な問題が起きたり、今の問題がさらにひどくなったというのはよく聞く話です。渋滞を解決するために道路を拡張したら、走る車の量がさらに増えてより渋滞が激しくなったとか、害虫を駆除するために農薬を撒いたところ、農薬に対する害虫の耐性が強くなり、よりたくさんの農薬が必要となって人間の健康にも害を及ぼすようになったなど、こうした話は枚挙にいとまがないでしょう。
このように、問題が根本的解決に至らず、別な問題を引き起こしているのは、個別の事象にのみ視点が向いている分析的思考で問題解決を図っているからだというのが著者たちの見方です。そして、分析的思考ではなく、問題を取り巻くシステム全体を見渡したシステム思考で問題解決を図ろうということを主張しています。
木を見て森を見ずではなく、森全体を見渡そうというようなことは昔から言われていることだと思いますが、システム思考のおもしろいところは、単なるスローガンで終わらず、問題解決のための思考のツールを提示していることと、問題が起きている状況をシステム原型として類型化しているところです。
システム思考のツールとしては、時系列変化パターングラフというものと、ループ図というものが紹介されています。時系列変化パターングラフは、ものごとの変化をグラフ化して、時系列で表すというもの。何か特別すごいツールではないですが、ものごとの浮き沈みをグラフで図示化すると、ある特徴を持ったパターンを見いだすことが容易になります。
ループ図は、課題となっているシステムの要素をすべて書き出し、矢印で繋いで、どのような因果関係が働いているかを見るもの。これによりシステムの構造を明らかにし、小さな力で大きく構造を変えられる介入点(レバレッジ・ポイント)を探すというのが、システム思考による問題解決の基本のようです。実際のループ図を見たり、自分でループ図を描いてみないとちょっとイメージしにくいかもしれませんね。
共有地の悲劇、成長の限界、エスカレート、強者はますます強く、などなど類型化された問題構造がシステム原型として、ループ図付きで何種類か紹介されています。
例えば、共有地の悲劇は「誰でも自由に利用できる(オープンアクセス)状態にある共有資源(出入り自由な放牧場や漁場など)が、管理がうまくいかないために、過剰に摂取され資源の劣化が起ること」(EICネット)ですが、これは環境問題などでよく使われる概念ですね。一見無関係に見えるそれぞれ別の問題でも、構造的には同じ問題ということがあります。その場合、ある問題で有効だった問題解決の手法が、別のところでも有効に機能する可能性があります。ポイントは、構造の種類を見抜くことと、レバレッジ・ポイントを探し当てることでしょう。
この本ではシステム思考の概要が紹介されていて、システム思考による具体的な問題解決の手法までは説明されていません。もっと詳しく書かれた本を読んで、システム思考についてちょっと勉強してみようと思います。
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入門! システム思考 (講談社現代新書 1895) 枝廣 淳子 内藤 耕 講談社 2007-06-21 by G-Tools |