ブログもしくはネットでのマナーを考えるという記事に対し、かえるさんから以下のようなコメントがありました。

インターネットって、いわゆる“脱中心化”の代表例って言うか、
ポストモダン的な文脈で理想的な例として挙げられる例が沢山あるけれど、
じつは、大手サイトが牛耳っちゃってる例って結構ありますよね。

 このコメントに触発されて、これまでぼんやりと考えていたことを簡単に図示化してみました。その図を用いて、ある大手ブログ(大手と呼べるほど大きいかは異論のあるところだろうけれど、ここではとりあえずそう呼ぶ)が、自分の基準に反しているブログ初心者を批判・嘲笑している構図を説明したいと思います。とりあえずの試論ですし、内容的な重複もありますが、上記コメントに対する返事(→こちら)とあわせて読んでいただければ幸いです。

 インターネット世界全体を俯瞰すれば、脱中心的な構造と云えると思いますが、その中には無数のコミュニティがあり、コミュニティには中心があります。あるコミュニティの中にコミュニティが含まれる場合もあるし、複数のコミュニティが部分的に重なっている場合もあると思います。
 それぞれのコミュニティでは中心がはっきりしている場合と、曖昧な場合があります。また、コミュニティの境界線は曖昧なケースが多いですが、小さなコミュニティなどのように境界がはっきりしていることもあります。境界線がはっきりしているほど、外に対して閉鎖的になります。
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 このインターネット世界の中に、ブログをやっている人たちすべてを包含するブログ界(blogosphere、ブログ圏と同義)というものを措定します(ここでは議論をわかりやすくするために、とりあえず日本語以外の言語圏のブログを除外して考えます)。図で云うと、斜線の入った一番大きな楕円です。
 ブログ界の中心にはブログそのものに関心が高い人たちのコミュニティがあります。仮にそのコミュニティを「ブログコミュニティ」と名付けましょう。図では中心にある水色の楕円です。このコミュニティの特徴は比較的、中心がはっきりしているということです。コミュニティの成員が共通に見ているブログがある程度あり、ソーシャルブックマークなどで共通の話題がわかりやすく、世論が生まれやすくなっています。また、feedmeterなどによって、コミュニティ内のヒエラルキーがある程度可視化されています。もちろん、このコミュニティの中心にいるのはアルファブロガー、アルファギークと呼ばれる人たちです。
 ブログがインターネット世界に登場した頃はブログ界とブログコミュニティはほぼ同義でした。しかし、ブログの普及に伴い、ブログ界は爆発的に拡大し、ブログコミュニティと重ならない、独立したコミュニティもブログ界内部の周辺域に無数に出てきました。例えば、シニアがやっているブログのコミュニティやギャルがやっているブログのコミュニティなどもあるでしょう。もちろん、シニアなら全て一つのシニアコミュニティに属しているということはないでしょうから、シニアのブログコミュニティA、シニアのブログコミュニティB、といったようにいくつものコミュニティが存在するというイメージです。
 既存のブログコミュニティと重ならない独立したコミュニティは、比較的大きなところもあれば数人くらいで成り立っているような本当に小さなところもあります。一般的に、小さなコミュニティほど閉鎖性が高くなる傾向があると思います。
 そして、すべてのコミュニティにおいて、そのコミュニティの内部だけでしか通用しないコミュニケーション様式(作法)や言葉というものがあります。ブログ界の周辺に位置するような閉鎖的で小さなコミュニティでは、例えば、無断リンク禁止や無断トラックバック禁止がコミュニティ内のルールとなっているところもあるようです。図ではそれを黄色の小さな楕円として示しています。
 無断リンク禁止や無断トラックバック禁止ということは、上位コミュニティであるブログ界の規範からは外れるわけですが、閉鎖的で小さなコミュニティの中では成り立ちます。また、無断リンク禁止や無断トラックバック禁止を掲げるブログが、それをより普遍的ルールと認識している場合があります。そうしたことが起こるのは、小さなコミュニティしか知らないための勘違いであったり、インターネットやブログの仕組みについての理解が不十分なためにほかなりませんが、閉鎖的コミュニティ内に留まる限りは、実質的に他のコミュニティに対しては無害と云えるでしょう。
 しかし、このようなブログ界の規範から外れるブログを探し出しては、批判しているブログがあります。無断トラックバック禁止を主張しているブログに敢えてトラックバックして批判したり、無断リンク禁止を主張するブログに敢えてリンクしたりしています。黄色のコミュニティに属するブログは、リンクやトラックバックによるコミュニケーションの様式を理解しておらず、身につけていません。そうしたブログにリンクしたり、トラックバックしたりしても、コミュニケーションが成り立たないのは自明のことです。ましてや、自分たちのコミュニティ内だけで通用するような言葉でもって語りかけても、メッセージが通じるはずはありません。
 それではなぜ相手に通じないやり方、言葉で、自分たちの規範に外れるブログを批判するのでしょうか。理由は簡単です。自分たちの間では通じるやり方、言葉を用い、同じ規範を共有していることを確認することで、自分がそのコミュニティの一員であることを示したり、お互いに確かめあい、コミュニティの結束を強めるためです。典型的な例はこのブログ記事に表れていると思います。→ぽんすブログ: Notificationとトラックバック
 むだづかいにっきというブログも、ブログ初心者にメッセージを発してるように見せかけながら、実は向いている方向がブログコミュニティの中心です。ブログコミュニティの言葉と様式でもって、その外部に位置するコミュニティの人に語りかけているのだから、メッセージが伝わるわけがありません。本人に自覚があるかどうかわかりませんが、もともと彼はブログコミュニティの内部にしか向かってないのです。ARTIFACTことのはといったブログコミュニティの中心に位置するブログを好んで引用したがるのが、その表れと云えるでしょう。
 彼のやっていることは実質的に、オープンで開放的なブログコミュニティを閉鎖的なブログ《ムラ》化する試みであると思います。異なるコミュニティの相手に、理解や納得をしてもらおうというのではなく、自分と相手の違いを際立たせようとしているからです。
 そうした彼の新しい試みがこれです。
むだづかいにっき♂:無断TBお断りバナー
 無断トラックバック禁止のバナーをネタとして作り、真に受けて使用するブログが出てきたら、みんなで嘲笑しようということのようです。この笑いを共有することで、その人たちは同じコミュニティの成員であることを確かめあうのです。
 しかし、こうした試みにより、無断トラックバック禁止を掲げるブログが減少するとは思えません。それどころかむしろ、今までトラックバックに対し何の意見・考えも持っていなかった初心者が、トラックバックは無断でしてはいけないのだと誤認する可能性があり、効果としては逆の方にいくおそれがあります。でも、むだづかいにっき的にはそれでいいんです。なぜか? みんなで嘲笑できるからに決まってます!!
 仮に無断トラックバック禁止をいうようなブログが減っても、彼が次に向かう方向はすぐ予想がつきます。新たな規範を作り、新たな差異を見いだすことです。その矛先はBlogPetなどにも向いているようです。→むだづかいにっき♂:うさぎがやっぱり要らないわけ
 つまり、ブログ界に啓蒙し、規範に外れているブログを減らそうとしているように見せかけつつ、やっていることは実際には、規範に外れるブログを増やすことです。
 むだづかいにっきというブログが、無意識的であれ目指していることは、自身のブログがブログコミュニティのより中心に近い位置に移動することと、ブログコミュニティをブログ《ムラ》化することだと思っています。しかし、いずれはそのどちらの企ても破綻することでしょう。あるいは、自身が作ったブログ《ムラ》から村八分にあうようなこともあるかもしれません。
 彼は自分のブログをウェブ論、ブログ論のブログと位置づけているようですが、そのわりにはメタな視点が少ないように思います。基本的に主張していることは、こういうトラックバックはけしからんとか、そのレベルです。一度、物事を見る視点の位置を変えてみた方がいいのではないかというのが老婆心からのこの記事の結論です。
追記(05/06/27):
はてなでブクマしてコメントしてくれた方々へのお返事。
(tsupoさんもコメントの記入がありますが、本文中からの文章の引用なのでそれ以外の方に)
takoponsさん

メタブログ論。初心者に反論するな。子供言葉で接するか、または無関心でいてくれってことなのかな?

 実害なければ僕なら放置ですけどね。どうしても何か云わずにいられないなら、相手にわかる言葉と様式で。そうじゃないとコミュニケーションになりません。以前、お年寄りにメールの使い方を指導したことがあるんですけど、一筋縄ではいかなかったですよ。これは極端な例かもしれないけど。
faintmemoryさん

遅かれ早かれ気づくであろう事を敢えて指摘する役目をわざわざ引き受ける必要もないだろうということ

 そういうこととはちょっと違うと思うんですがね。リンクについては話が長くなるのでここではとりあえず置いておきますが、少なくともトラックバックに関しては、第一義的にはASPがユーザーにその使い方やマナーを教える義務があると思います。だからホントは、各ASPが松永さんが作ったような3分でわかるトラックバックみたいなものを作っておくべきなんじゃないかと(すでに作っているところもあるかもしれませんが)。
 で、無断トラックバック禁止とか云ってるようなブログがあれば、「あなたの使っているブログサービスのホームページではトラックバックをこう説明してますよ」とコメント欄に書いて、URLだけ貼っておくのがスマートだと思います。知らない人にいきなり「トラックバック云々」云われたってあまり聞く耳を持たないでしょうが、自分の使っているブログサービスのサイトにそう書いてあれば、多少は納得するんじゃないでしょうか。
kanimasterさん

正面から、えっけん及びファミリーを批判。

 あはは。仲良しコミュニティーを作るのはけっこうですが、コミュニティ外の人と接するときにはもう少し気をつけた方がいいのではということでした。
ekkenさん

こっちのエントリは、こじつけ批判くさいなぁ。ところでkanimaster、「ファミリー」はやめてくれ。

 後半は批判自体が目的になってたかもしれないですね。やや反省。しかし、全体としては自分的にはよく書けたと思ってます。
shckorさん

ミイラ取りがミイラになってないか?

 僕も相手を見て叩きますから。えっけんさんにはこれでもまだ足りないくらいな気がしますよ(苦笑
 しかし、これ以上やるのもこちらも疲れるので、とりあえずはこのへんで。
 ブクマしてくれたみなさん、ありがとうございました。