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2006.09.22

グーグル・アマゾン化する社会(森健)

 河北新報社のブログ“Web日誌”で紹介されていたので関心を持ち、読んだ本。検索したら著者のブログもあり、この本の紹介もされていたが、ブログ自体はあまり頻繁に更新はされていないようだ。

 帯には「多様化、個人化、フラット化した世界で、なぜ一極集中が起きるのか?」とあり、その問いへの答えとの形で論が進められていく。そしてその答えだが、簡単に要約すれば以下のようになる。

 インターネットによって情報の分散化、フラット化が進み、情報はネットワーク状になっている。そうしたネットワークは“スケールフリーネットワーク”を形成しており、スケールフリーネットワークにおいては優先的選択が起きるためグーグルやアマゾンは一人勝ちしている。

 …と、大まかに言えばそういう結論になっている。最終的には、ネットにおける民主主義といったことにも話が及ぶが、まずはスケールフリーネットワークとはなんなのかということを、自分が理解した範囲で少々説明したい。

 スケールフリーネットワークとはどのようなものかというと、多数のリンクを持つ少数のノード(結節点)と少数のリンクを持つ多数のノードからなるネットワークのことである。

 スケールフリーネットワークの具体的な例としては、人間の交友関係や、航空機の航路、ほ乳類の脳におけるニューロンのネットワークなどが挙げられていた。航空機の航路の例で言えば、日本では羽田や関空といった空港がハブとなって多数の航路を持つ一方、地方の空港はそれほど航路を持たない。地方空港から地方空港へと行く場合にはハブとなる空港を経由することになる。

 スケールフリーネットワークの特徴は(1)成長があること、(2)優先的選択が起きることである。つまり、ネットワークの成長によって新しいノードができるとき、そのノードはすでに多くのリンクを持っているノードとのリンクを優先的に選ぶようになる。しかし、適応度(ノードに対する魅力とでもいえばよいか?)が高ければ、後発でもハブになれるとのことだった。

 スケールフリーネットワークの具体例については、はてなキーワードの説明がわかりやすいと思う。WWW、インターネット、男女の性的関係、学術論文などの例が挙げられている。

 そして著者は、グーグルやアマゾンはユーザーが参加すればするほどサービスが充実する「参加のアーキテクチャー」となっており、そのためスケールフリーネットワークが働くウェブの世界において多くのリンクを集めることになり、一人勝ちしているというのだ。

 スケールフリーネットワークだから一極集中が起きるというよりも、スケールフリーネットワークにおいてどうして(もしくはどのように)優先的選択がなされて、そのため一極集中が起きているかを考えた方がよさそうだ。そもそも世の中のネットワークは多くの場合スケールフリーネットワークなのではないだろうか(その対照となるのはランダムネットワークである)。

 本書でもその点について、知名度のあるものがある臨界点を超えるとますます爆発的に売れるなどといった例などを挙げて収穫逓増の法則について説明をしていたが、やや物足りない。本書読了後にネットであちこち調べていたら、ネット・エコノミー解体新書で磯崎哲也さんがネットワーク外部性についてオークションサイトであるイーベイの事例から説明していた。こちらの方が説明としてはわかりやすいだろう。

イーベイと「ネットワーク外部性」

 「ネットワーク外部性」とは、その製品やサービスの利用者が増加するにしたがって、利用者の便益が高まる効果を指す経済学上の用語であり、IT産業ではよく見ることができる現象である。
 例えば、WindowsなどのOS市場では、そこで使われるソフトウエアや利用者が増えれば増えるほど、他へ乗り換えづらくなる。通信も、プロトコルやイーサネット、メール、メッセンジャーなどを使う人がそれぞれ一定のしきい値」を超えると、使うメリットが急激に増大し、他のプラットフォームに乗り換えることが困難になり、結果として「一人勝ち」が発生する。価格や品質ではなく、「みんなが使っているかどうか」に左右されるところがネットワーク外部性の本質である。

 ついでながら、磯崎さんはグーグルとアマゾンについてもコラムを書いており、こちらも一読の価値があるので紹介しておく。

グーグルは「広告業」ではない
アマゾンと、ロングテールに関する“大きな勘違い”

 ところで、本書において著者は、ロングテールにおける勝ち組は、フラットに延びるテールの部分ではなく、グーグルやアマゾンと言った少数のヘッドなのではないかということを述べていた。もちろん、ウェブにおいてグーグルやアマゾンはロングテールのヘッドであることは確かだが、グーグルやアマゾン自身がロングテールを提供するプラットフォームとなっていることも重要なポイントではないだろうか。そして、それこそが彼らの富の源泉であるように思う。

 池田信夫 blogにも書いてあったが、ロングテールとは自己相似的(参考:フラクタル)で、部分の中にさらにロングテールが存在している。Web2.0ビジネスで勝つには、ロングテールのヘッドを目指すというよりは、自分自身がロングテールのプラットフォームになることを目指し、結果としてヘッドになる方がやりやすいかもしれない。

 本書の最終章では、ウェブのアーキテクチャーによって、思考や意見といったものが極端なものの方に流れる危険性についての懸念が述べられている。ここで出てきた沈黙の螺旋やサイバーカスケードといったことは、Web2.0が流行り出してから言われるようになったことではなく、特に前者などはインターネットが普及する以前からすでに言われていたのではないかと思う。Web2.0やスケールフリーネットワークとは無理矢理くっつけている感じもするし、目新しさはない。これらの問題点については、メディアの側(ここではウェブ)での改善点もあるだろうが、結局は受け手の側のメディアリテラシーにかかってくるのではないだろうか。

 問題点の実例として挙げられていたのは、グーグルで「靖国問題」とのキーワードで検索した結果の上位が、靖国問題について一方の側の立場に偏っているということだった。しかしながら、メディアリテラシーの高い人が靖国問題を総合的に調べたいと思ったら、キーワードの組合せを何通りか試してみることだろう。「靖国 論点」というキーワードにしただけでも結果はだいぶ異なる。

 この最終章での議論については、そのうち(気が向いたら)記事をあらためて書いてみたい。


4334033695グーグル・アマゾン化する社会
森 健
光文社 2006-09-15

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関連記事:
新ネットワーク思考(アルバート=ラズロ・バラバシ)(06.10.23)

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