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2006.03.26

リチャード・ドーキンスという権威に盲従してない?

 リチャード・ドーキンスは『利己的な遺伝子』『盲目の時計職人』などの著作で知られる有名な生物学者。邦題『悪魔に仕える牧師』というエッセイ集に所収の「信じてもいい理由と信じてはいけない理由」という文章が、ネット上に公開されている英文から翻訳されて以下のブログに掲載されています。

信じてもいい理由と信じてはいけない理由(satolog)

 ドーキンスから10才の娘ジュリエットに宛てた手紙となっていて、世界を知る上での科学的なモノの見方の重要さ(「証拠」はあるか? )と、(宗教による)「伝統」「権威」「お告げ」を信じることの危険性について書かれています。

 はてなブックマークでもすぐさま人気記事となり、現時点でブックマークが200人を超えています。コメント欄を見ると、だいたい好意的にこのテキストは読まれているようなのですが、せっかくドーキンス先生が権威を疑えと云っているのだから、もうちっとクリティカルにこの文章を読んでもいいんじゃないかと僕なんぞは思うのです。

はてなブックマーク - satolog: 信じてもいい理由と信じてはいけない理由

 で、この機会にドーキンスについていろいろネット上で情報を調べてみたところ、彼はけっこう明確に反宗教の立場を出していることがわかりました。確かに、創世記に書かれていることをそのまま事実として信じちゃうような態度は危険だろうと思います。しかしながら、キリスト教徒がみな創世記に書かれているストーリーを事実として受け止めているわけでもありません。

 僕自身は特定の信仰を持っている人間ではありませんが、信仰を持つということは、その宗教が持つ価値観を認めることなのではないかと思います。そうした価値観は必ずしも科学によって正誤が判定されるものではないだろうし、科学的態度と信仰を持つということが必ずしも対立するものではないと考えます。

 ドーキンスの手紙では、最後に以下のようなくだりがあります。

次に誰かが大切そうなことをお前に言うとき、自分で考えるんだ。「これは証拠によって人が知ることができるようなことなのだろうか? あるいはこれは伝統や、権威や、お告げによってただ人々が信じているようなことなのだろうか?」って。そして、次に誰かがお前に何かが本当だと言うとき、こう言ってみたらどうだろう。「どんな証拠があるの?」って。もし彼らがいい答えをお前にあげられなかったら、お前が彼らの言うこと信じる前にとても慎重に考えることを私は願っているよ。

 でも、例えば誰かが死んだときに「何で葬式なんてやるんですか?」「亡くなった人が成仏できるようにするんですよ」「人が死んだら成仏するなんて、どんな証拠があるんですか? それは科学的に認められている事実なんですか? 学会誌にそういう論文が掲載されたことはありますか?」なんてやり取りをしたらとんでもないことになるってww

 僕にもし娘がいたとしたら、もうちょっと別なアドバイスをしてやりたい。伝統や権威、お告げによって何かを信じている人がいる場合、それはなぜ伝統、権威、あるいはお告げとして認められているのだろうか考えてみなさいと。

 それがなぜ伝統として続いているのか、それは本当に伝統なのか、伝統であるということにはどのような価値が置かれているのか。それはどの程度の権威なのか、権威として成り立つにはどのような外的要因が必要か、そもそも権威とは何か。お告げは日常生活的文脈からちょい離れるけど、それなら宗教的なコンテクストの中でお告げとはどういう意味を持つのか、とか。問いはいくらでも立てられます。そして、そう問うてみたところでそれに何らかの価値を見いだしたのなら、それを信じたっていいと思いますし、そういう価値を信じることは科学的な態度とはまた別の話だろうと思います。

 上述したような問いを突き詰めれば、娘は立派な宗教学者か人類学者か社会学者にでもなれるかもしれんw ま、別にそんなのにならなくても全然いいんですけどね、世界をすべて“科学”によってのみ見るのもまた危険だろうと。科学が新たなイデオロギーとか宗教になるのもアレだし、科学というものを相対的に見る視点もやっぱり必要だと思うのですよ。

 作家の瀬名秀明が「社会を信ずるロボット、科学を信ずるヒト」というタイトルでおもしろいコラムを書いてます。ドーキンスの「信じてもいい理由と信じてはいけない理由」にも言及しているので、ドーキンスの手紙を読んでブクマした人は、こちらもあわせて読んでおくことを激しくおすすめします。

Webマガジンen 社会を信ずるロボット、科学を信ずる人


4152085657悪魔に仕える牧師
リチャード・ドーキンス 垂水 雄二
早川書房 2004-04-23

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