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2005.11.06

例え話の危険性

 ネット上でのことに関して、リアル社会の例え話を持ち出すのはしばしば危険ではないかって話。

 日々是自己主張というブログの「 「無断リンク」はマナー違反というマナー自体が存在しない」という記事において、日本のうどん屋において日本人と西洋人がうどんを食べている例え話が出されている。

 日本ではうどんをすすって食べることに問題はないが、西洋では音を立てて食べるのはマナーに反する。しかし、音を立ててうどんをすする日本人に不快感を持った西洋人が、その日本人に対して音を立ててうどんを食べることを禁止することはできないだろうと。そこで、無断リンク禁止を主張する人をこの例での西洋人に例えて、そのように禁止を主張することはおかしいはずだとしている。

 しかしながら、ネットとリアルとの比較で一番気をつけなければならないのは、ネット上においては場所性というものが喪失しているということである。上記の例で云えば、そのうどん屋は日本にあるのか西洋にあるのかということで、ネット上ではどちらでもあるし、どちらでもないかもしれない。西洋のうどん屋…といってもうどん屋があるかどうかわからないので仮にパスタ屋だとして、そこでパスタをすすって食べる日本人を西洋人が注意することはどうであろうか。郷に入れば郷に従え的考えを採用するなら、それもありだろう。

 無断リンク禁止を主張している人たちが、同じ主張の人同士でネット上のコミュニティを形成していたなら、その人たちにとってはそこが郷になるわけで、そこは日本なのか西洋なのか場所を断定することは誰にもできない。

 逆に、文化相対主義的な考えを持ち出すと藪蛇になりかねないだろう。彼らは、自分たちのいる場所は日本のうどん屋じゃなくローマだと云うかもしれない。

 だから、無断リンク禁止を主張する人にその考えを改めさせたいというならば、そうした例え話を持ち出すよりは、無断リンクを禁止にするのとそうでないのとでどちらがより理に適っているのかを比較する方がいいのではないかと思われる。

 この例え話に納得している人がわりといるみたいなのでちょっと異論を書いてみた。別にこの件に限らず、例え話が適切かどうかは常に吟味するべき。例え話を聞いて、わかったつもりになることってけっこうあるものだし。

 それにしてもみなさん、ネットマナーの話が好きですね。


追記(2005/11/7):
 無断リンクの件で、例え話は使わない方がよいという意見が既にありました。
例えは持ち出さない方がよい(おけぐわの日記)

自分の意見を補強するために「例え」を持ち出すと、議論の相手はほとんどの場合「その例えはおかしい」と指摘してきます。その例えを認めてしまえば、そこから導かれる結論も認めざるを得ないからです。

しかし、Web 特有の概念を現実にある何かに例えることは不可能です(そのせいで、それぞれ問題の認識の仕方が違ってしまって議論になるわけですが)。

 論争における例え話って、論争の相手よりは自分の論を支持している人に向かってのものなんでしょうね。だから結局、相手とは話が噛み合わないまま終わってしまう。

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» 例え話を用いる目的とリスク
■例え話の目的 ▼難しい事柄を、わかりやすく説明するため。  →例え話そのものは、わかりやすいものでなければならない。 ▼抽象的な事柄を、具象的な表現で叙... [続きを読む]

Comments (5)

先ほどはコメントをありがとうございます。

まずお断りしておきたいのは、私の喩えにおいては「日本国内」=「ネット社会全体」を指しているということです。そうでないとこの喩えは意味をなしません。文化圏の違いを問題にされている方は他にもいらっしゃるようですが、いまのところ日本国内において「うどんをすするのはマナー違反」という「文化」は存在していません。そういう人もいるかもしれませんが、「文化」や「マナー」にまで昇華しているとは思われません。それがこの喩えの前提です。
ネット上では「リンクは自由である」(=うどんをすすってもいい)というのが原則であり、「無断リンク禁止」(=うどんをすすってはいけない)を訴える人は例外です。もしこの喩えの中で、他人に対してうどんをすするのを禁止しようとする日本人なり西洋人なりがいるとしたら、相手にその理由を示し、納得させ、合意を得る必要があります。それと同じように、「リンクは自由ではない」旨を主張する人は、その理由を示し、相手を説得し、合意を得る必要があるといえます。
多くの「無断リンク禁止」論者は、「人に不快感を与えるのはマナー違反」→「無断リンクはマナー違反」と結論しています。しかし、私が記事の中で示したとおり、人に不快感を与えること=「マナー違反」とは限りません。「マナー」とは本来そのように抽象的なものではなく、個別具体的に定められ、構成員の総意として合意されているものと考えられます。となると、「マナー違反」だから「無断リンク禁止」という主張は妥当性を欠くことになります。私がこの記事の中でいいたかったことはそういうことです。

>ネット上では「リンクは自由である」(=うどんをすすってもいい)というのが原則であり、「無断リンク禁止」(=うどんをすすってはいけない)を訴える人は例外です。

無断リンク禁止と云っている人はそもそもそのような前提に立っていないからそう主張しているのです。だから、そこでうどん屋どうこう持ち出しても内輪で盛り上がるだけで、あまり意味がないのではと思っています。つまり、その例えを例えとして共有できるのは「無断リンク禁止とか云っているやつを見るとむかつく」人の側で、「勝手にリンクしてくるやつがいてむかつく」人の側では自分こそがその例えにおける日本人だと思うかもしれません。

例え話の効用としては、わかりにくい話をわかりやすくする効果と、レトリックとして話をおもしろくする効果があると思います。その代わり話は捨象され単純化してしまい、切り落とされる部分が出てきます。今回の場合、そうやって落とされた部分の方が大事なんではないかと。

マナーとか不快だとか持ち出すと、互いに自分たちの方が正しいと思っているからぜんぜん埒が明かないんですよ。

僕が考えるに、より重要な問題は「ウェブ上の情報に対するアクセスを設定する権利を誰が持つのか」ということです。元の情報を出した人か、それとも新たに情報を加える人か。無断リンク禁止を主張する人は、自分の出した情報に対するアクセスの設定権は自分にあると思っているから、「じゃあ自分のサイトへのリンクは自分の許可制にしよう」などと考えるわけです。その意味では、自サイトで「このサイトはリンクフリーです」と書く人も、自分がウェブ上に出した情報に対するアクセスの設定権を持っていると認識している点では基本的考えは同じかもしれません。

このことについて書き出すと長くなるのでこのへんにしておきますけど、知の共有を進めていくためにはどちらがより理に適っているかを説明することの方が重要で、矮小化されたネットマナー論を論じても、話はいつも同じところをぐるぐる回るだけなのではと思います。

Akkyさんの記事は「あえてWebを日本に限定したとして」という思考実験であるので、論理的には問題が無いと言えるのですが。
それでも私はfudaさんと同じように例え話は危険だと思っています。

例えば「ネット上では「リンクは自由である」(=うどんをすすってもいい)というのが原則であり」という主張に対し「ネットは単なるメディアや道具であって、現実の文化の延長線上に存在する。現実では無断でリンクなどで言及することは失礼である。だからリンクが自由であるという主張自体が不自然だ」と反論されるでしょう。

ちなみに私は「リンクされるのは仕方が無い仕組みだから、自衛しろ」という意見です。

例え話は、わかったつもりになるのが危険だと思います。あと、無断リンクの件についてはあまりマナーとかに話を持っていかない方がよい気がします。

上のコメント欄でも書きましたが、「ウェブ上の情報に対するアクセスを設定する権利を誰が持つのか」がポイントで、それはやはり後から情報を加える人の方が理に適っていると思います。権利と同様に責任もですけど。

>ちなみに私は「リンクされるのは仕方が無い仕組みだから、自衛しろ」という意見です。

次のエントリで長々と書きましたが、(Web2.0への大きな流れの中では特に)ウェブでは情報は「発信」するのではなく「共有」するものだと思います。共有する範囲を制限したいということは当然ありうるだろうから、その場合は適切に公開範囲を設定できないといけません。それがotsuneさんのいうところの自衛ということなんでしょうね。

たとえ話が効果的でないのは分かったのですが、今回の私の記事はあくまでも、「無断リンクはマナー違反」と唱える人へのマナー論からの反論です。実際、えっけんさんのところで「無断リンクはマナー違反」と主張する人を見かけたものですから。あの喩えをもって、すべての無断リンク禁止論を封殺できるものとは私も考えておりません。

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