●第4次産業
「第1次産業、第2次産業、第3次産業ってあるでしょ。六ヶ所村には第4次産業があるんですよ」
「第4次産業?」
「そうです」
「いったい…、どんな産業なんですか?」
「選挙です」
核燃料サイクル施設が集中する青森県六ヶ所村。この村の議員定数は20人だ。村議会選挙では候補者1人あたり2千万の金が動くといわれている。2千万×20で4億。有権者数9千名弱の小さな村にとって、4年に1度動く4億という金はまさに一大産業と呼べるもののようだ。
●核燃マネーと80の建設業者
しかし、この金の出所はいったいどこなのか?
まずは村の財政を見てみよう。六ヶ所村の財政力指数は平成14年度で1.77という数字になっている。多くの自治体は1未満で、1に近ければ財源に余裕があると見なされるのだが、それを大きく超えている。
村に巨額の金をもたらすのはもちろん核燃である。固定資産税と電源三法交付金。そして、こうした核燃マネーがもたらす潤沢な村の予算から、公共事業として開発に金が振り向けられるわけだ。
議員のほとんどが建設業者など利権を持つ人たちであり、議会では与党と野党に分かれて、利権をめぐり争っている。むつ小川原開発がやって来て以降、建設業者は増え続け、今では80あまりの建設業者が村の中にひしめいている。
●反核燃候補の得票は2桁だけ
世の中には核燃に反対している人も大勢いるわけだが、六ヶ所村の議会には反核燃を訴えている議員はいないのだろうか?
かつては六ヶ所でも激しい反核燃運動があったが、今では当時ほどの盛り上がりはない。利権をめぐる争いの場と化している村議会の中に、核燃反対派が付け入る隙はない。そもそも六ヶ所村において反核燃の姿勢を明確にすることは危険なことである。あらゆるところから圧力がかかり、干されてしまって、村で生きていけなくなる。
また、六ヶ所村では地縁、血縁などといった結びつきが強固で、選挙の票読みはかなり正確にできるという。そのような中で得票数が事前の票読みより1票でも足りなければ、「入れなかったのは誰だ」となる。とてもじゃないが、反核燃候補に投票できる雰囲気ではない。
近年の六ヶ所村での選挙結果を見ると村長選、村議選ともに、反核燃を訴えた候補の得票は2桁で、当選ラインには遠く及んでいない。
●核燃と生きる村
核燃はすでに村民の生活の中に深く入り込んでいる。核燃サイクル事業を行っているのは全国の電力会社が出資している日本原燃という会社だが、村の多くの人が日本原燃やその関連企業で働いていたり、それらの企業が取引先だったりする。自分が働いていなくとも、だいたい家族や親戚の中にそうした企業に勤めている人がいる。
核燃から入る金で生計を立てているのに、どうして核燃に反対できようか?
六ヶ所村には農業と核燃をのぞくと他にこれといった産業はない。六ヶ所村に生きるということは核燃とともに生きるということなのだ。
◆六ヶ所村を歩いて
今年の春、僕は六ヶ所村を訪れた。大学院での指導教授の調査旅行にくっついて、青森県の下北、上北地方のいくつかの市町村をまわったうちの一つだ。
いろんな人に会い、いろんな話を聞いた。いろんな場所を訪れ、いろんなものを見た。
そこで得た感想はというと、この六ヶ所村という村はとてもいびつな場所だということだ。1万1千人ほどの人口に130億という村の予算。立派に舗装された道路にまばらな人影。前の村長は汚職の疑惑の中、首を吊って自殺したという。この村のどこを歩いていても、核燃という厚い雲に覆われていて、そこに晴れ間は見えない。
そんないびつな構造の上に、電力の消費者であるわれわれはあぐらをかいて座っている。そして、窓の開いた部屋で冷房を入れ、見もしないテレビのスイッチをつけている。
◆今こそ世論を動かそう
週刊!木村剛に核燃サイクルという遊びにやる金はないんだよ!との記事があった。核燃サイクルの総事業費は約19兆円とされている。1万円札にして積み上げれば19万メートル。成層圏を突き抜けるほどの額である。当然こうした費用はわれわれの電気料金に跳ね返ってくる。
木村氏は霞ヶ関のお役人たちに「遊びにやる金はないんだよ!」と言ってやりたいとのことで、既に破綻しかけている計画にいつまでもしがみついている官僚たちの責任は当然大きいのだが、僕はわれわれ一般国民の責任もそれと同じかあるいはそれ以上に大きいと思っている。
核燃という迷惑施設を六ヶ所村に押し付け、利権に支配される村の構造を作り出したのも、元はと言えば、自分が豊かな生活を享受できればそれでいいという利己的な欲望や、核燃サイクルの話なんてどうでもいいというわれわれの無関心に原因があるのではなかろうか。
先に見たように、今や六ヶ所村や青森県という地元から核燃を止めることは極めて難しくなっている。また、官僚が核燃サイクルの馬鹿馬鹿しさに気づいて計画を止めてくれるということもないだろう。彼らの中には既に核燃サイクルが破綻していることに気づいている者もいるが、もしここで止めると誰かが責任を取らなければならない。今の時点で責任ある立場にいる人はそれを避けたいから、問題は常に先送りされる。そうして計画は少しずつ進んでいく。
一人一人の官僚は有能でも、官僚制というシステムは根本的な問題を抱えているようだ。
さてそうなると、核燃を止めるのはわれわれ国民の世論しかない。それも声を上げるならネットからしかないと思われる。というのも、テレビや新聞、雑誌といった既存のマスメディアには、大スポンサーであり、地域の経済界において大きな力を持つ電力会社から圧力がかかってくるからだ。
東奥日報の記事によると、六ヶ所再処理工場のウラン試験(稼働試験)の前提となる青森県、六ヶ所村と日本原燃の安全協定締結は11月以降になる見通しとのことだ。本格操業ではないものの、ウラン試験が始まれば施設は当然汚染され、処理には多額の費用が必要になる。
核燃を止めるには今がまさに正念場である。ゴーログにおいてもっとこの問題が取り上げられ、核燃サイクルという暴挙を止める世論の発火点となることを期待したい。
【関連記事】
・なるべくわかりやすい六ヶ所村・核燃料再処理の説明(2006.6.13)
・六ヶ所村・核燃料再処理の問題点(2006.6.24)
・河野太郎氏が語る「再処理工場の秘密」(1)(2006.8.16)
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Comments (2)
2006年6月半ば、六ヶ所村の南、五戸川でワニらしき1m余りの茶色いものが泳ぎ去るのを目撃されたとか。専門家の話ではワニがその緯度で長期に生息するはずは無いとの事で、まさか、早速ゴジラか?!って、まるまる本気ではないですが、アクティブ稼動の直後だし、寒くても動けるようになったとか...?
田仁 | 2006.06.15 17:53
ゴジラも水爆による放射能を浴びて突然変異を起こした生物って設定でしたよね、確か。
六ヶ所村にもヤヴァい生物が現れたりして…。
fuda | 2006.06.15 23:20