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市民の政治学―討議デモクラシーとは何か (岩波新書) 篠原 一 岩波書店 2004-01 by G-Tools |
この本を初めて読んだのは大学院生のときで、市民社会論の授業で指定図書になっていたので読みました。ちなみに、他に指定図書になっていたのは山口定の『市民社会論』など。
それからしばらくが過ぎ、鳩山政権の時代に盛んに「新しい公共」いう言葉が使われるようになって、これが一種のバズワードになりました。
では、その「新しい公共」とは何か。例えば、Yahoo!辞書の新語探検ではこんなふうに紹介されています。
総理大臣の鳩山由紀夫が2009年10月の所信表明演説で掲げた理念。これまで「官」が支えてきた教育や子育て、防犯や防災、医療や福祉などの公共サービスに、地域のNPO法人や市民が積極的に参加できるようにして、社会全体として支援する新しい価値観を生み出そうとしている。
Wikipediaだとこんな感じ。New Publicという英語はないと思うのですけどね、、
新しい公共(あたらしいこうきょう、英: New Public)は、公共サービスを市民自身やNPOが主体となり提供する社会、現象、または考え方。
それで、「新しい公共」がこのように紹介されていることに違和感があり、再度『市民の政治学』を読んで、「市民社会」や「新しい公共」を考えてみようと思ったのでした。
本書では、新しい市民社会を論じるにあたって、近代の成立から説き起こしています。
科学革命、近代国家の発展、近代産業の成立、市民革命を経て、第二次大戦後の経済成長でいよいよ爛熟を迎えた近代社会は、一方でさまざまな矛盾とリスクを顕在化させるようになりました。そのように近代社会が揺らぎ、変容している中で、「第二の近代」(ベック)がその徴候をあらわし、新しい市民社会の姿が立ちあらわれていると著者は言います。
新しい市民社会とは、国家(政治システム)と市場(経済システム)から区別された第三の領域で、生活世界に根ざした社会のこと。これは、18世紀前後、市場経済の発達によって国家から社会が分離し、国家と市民社会の二領域で捉えられた古典的市民社会論と対比されます。
そして本書では、こうした流れの中でデモクラシーのあり方も変容しており、選挙を通して政治に参加する代議制デモクラシーだけでなく、市民社会での討議を重視する討議デモクラシーも要請される時代になっていることが主張され、討議デモクラシーの制度化の具体例が紹介されています。
というわけで、この本では「新しい公共」という言葉自体は出てきませんが、「新しい市民社会」や「市民的公共性」という言葉で書かれているところが、「新しい公共」に重なる部分でしょう。ただ、今語られている「新しい公共」が、公共サービスを市民が担うこととされているのに対し、「新しい市民社会」において重視されているのは市民社会における討議です。
これは、これまでは公共の意志決定が、官僚による行政機構とプロの政治家に任されていて、市民は政治家を選挙で選ぶということでしか参加できなかったので、それを市民社会における討議によって、公共の意思決定にもかかわろうということです。だから、現在言われている「新しい公共」では、市民が担うのが公共サービスのみに矮小化されていることに違和感を持っていたのでした。
討議デモクラシーの制度化の事例としては、討議制意見調査(Deliberative Poll)、コンセンサス会議、計画細胞(プラーヌンクスツェレ)、市民陪審制といったものが紹介されています。それぞれの紹介はまた別の機会に譲るとして、民主主義をバージョンアップさせるようなこうした試みが、日本でももっと議論されたり実践されるべきと思います。
「新しい公共」について、根本的なところから考えたい人にお薦め。
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