![]() |
「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方 英治出版 2007-11-06 by G-Tools |
著者の駒崎弘樹氏は、NPO法人フローレンスの代表理事。
学生ITベンチャーの社長から転身し、NPO法人を立ち上げて病児保育サービスを事業化。社会起業家の旗手として今もっとも注目を浴びている存在…と書くと、社会的意識が高く、かつすごい切れ者のようなイメージだろうけれど、この本で描かれている著者の姿は、ちょっとお調子者で、女の子にモテたいといつも思っているけどなかなかモテないような三枚目(とは言っても、そういうキャラをつくっている気がするし、実際は人気があるんだろうと思う)。
この本は、そんな著者がITベンチャーを辞めて、さまざまな壁にぶつかりながらも、フローレンスの事業を軌道に乗せるまでを描いた青春記。「汗と涙と笑い」に満ちた漫画的なノリで、テンポよく読み進めることができます。この本を読むことで、さらには社会起業家とはなんぞやということや、現代日本の行政や公共サービスが抱えている矛盾・問題点の一端を理解することができるでしょう。
これまで社会的課題というものは、行政が取り組むべきもの、あるいは、市民団体が取り組むにしても行政からの補助金をもらって行うものという意識が根強かったと思います。しかし、行政にお願いするのではなく、自ら事業を起こし、その事業によって社会的課題の解決を目指す人たちが増えてきました。それが、社会起業家と呼ばれる人たちです。
駒崎氏が立ち上げたフローレンスも、非施設・共済保険型というこれまで盲点となっていたビジネスモデルをつくり、病児保育サービスの事業化に成功します。それまでは、病児保育をやっているところは少なく、そうしたところもかつ補助金をもらいながら赤字で運営していたのです。
補助金を貰っているのに赤字になるというのは不思議に聞こえるでしょうが、それにはこんなカラクリがあります。
官公庁には「行政サービスは全国どこでも同じ価格で提供するべき」という考え方があり、病児保育事業についても国が値段を決めていた。それが一日二〇〇〇円という金額である。
ベビーシッターを頼むと、一時間で一五〇〇~二〇〇〇円だから、市場価格の十分の一。利用者にとっては、非常にうれしい値段設定だが、これでは事業者にとってたいした収入にならない。だから補助金に頼るしかない。しかし補助金が十分ではないのだ。年間六六〇万円というのが基本的な額なのだが、これでは人件費と事務経費だけで飛んでいってしまう。家賃や水光熱費を支払うと、もう赤字だ。
病児保育へのニーズは高いが、経済的に成り立ちにくく、補助金をもらってもかえって赤字になってしまう。そんな状況に風穴をあけたのだからすばらしい。
もちろん、順風満帆で事業に成功したわけではなく、幾度も壁にぶつかり、それを乗り越えながらの結果でした。彼らが簡単にはあきらめなかったということもあるでしょうが、多くの人が彼らの志に共感し、支援したことも大きいと思います。弁護士や行政職員、大企業の人事課長、マスコミの記者、外資系投資ファンドの社員といったような専門職の人たちから学生まで、多くの人たちが協力を買って出るわけです。
志のあるところには人が集まる。そんなことを感じさせられました。
「金があるところには人が集まる」ではない、新しい時代の起業家のモデルを知るのにおすすめの本。
関連記事:
⇒ チェンジメーカー―社会起業家が世の中を変える(渡邊奈々)
⇒ 非営利組織の経営(P.F.ドラッカー)
⇒ 図解で学ぶドラッカー入門(藤屋伸二)
⇒ ボランティア もうひとつの情報社会(金子郁容)
Leave a reply