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質問力 ちくま文庫(さ-28-1) 齋藤 孝 筑摩書房 2006-03-09 by G-Tools |
「伝える力は聞く力」という言葉を先日、ある方から聞いた。だいたい人というものは聞きたいことしか聞かないのだから、誰かに何かを伝えたいときには相手が何を聞きたいのか知ることが大事で、そのためにはまず聞く力が必要、というような話だった。
確かに、質問する能力、問う能力というのはコミュニケーションの本質のようなものである。自分も仕事や研究の関係で聞き取りやインタビューを行うことがたびたびあり、また、そもそも普段の会話の中で自分の質問力が今ひとつだと感じていたこともあって本書を読んでみた。
■座標軸を使った質問の分類
齋藤氏は座標軸を使った分類がお好きなようである(笑) 確かに座標軸を使って分類する視点を持つと、物事がわかりやすい。自分がしている質問がどの象限に入るのか意識していると、いい質問ができそうだ。
例えば、専門家にその専門とは関係のない些末なことを聞くのは第2象限(具体的-非本質的)となる。自分が聞きたいが相手は話したくない(第2象限)の質問を「子どもゾーン」、相手が話したいが自分は聞きたくない質問(第4象限)を「大人ゾーン」と齋藤氏は呼んでいる。世渡りのためには大人ゾーンもときには必要そうだ(笑)
現在と過去が絡まり合うような質問ができると確かに会話は盛り上がる。
■コミュニケーションの秘訣
本書では、作家や学者、文化人などの対話やインタビューから例を引いて、質問力を高めるための技をいろいろ紹介している。その中からなるほどと思ったものを2つ紹介。
・相手と自分の共通点を探し出す
「自分自身がどういう人間かを説明するより、互いに好きなものを見せ合う方が相手との接点を見出しやすい」とあったが、人間誰しも自分の好きなものについては語りたがるものである。
お互いのそういうポイントをうまく見つけられるようにするとよいだろうし、あらかじめそうした工夫をしておくとよいかもしれない。名刺の後ろに「自分の好きなものリスト」でも載せておこうか。
・相手の変化について聞く
映画監督の周防正行氏がプロ野球の古田敦也捕手に「古田さんの打撃が、劇的に変わった瞬間って何度かあると思うんですけど、最初はなんですか」と質問している例が出ている。変化については、変化前と変化後で比較するのは話しやすく、劇的に変わったときというのは人は語りたがるものとのこと。
自分でもインタビューや聞き取りをするときによく使っている方法があるので、ここで3つ紹介する。
・きっかけを聞く
「○○を始めたきっかけは何ですか」「なんで○○になろうと思ったのですか」など、応用範囲の広い質問。話のとっかかりになりやすいし、誰しも何かを始めた経緯というのはよく覚えているものである。本書でも宇多田ヒカルがダニエル・キースにしている質問を引いて、「物事の結果について聞くより、何かが生まれてきた経緯について聞いたほうが得るところが多い」とある。
・時間軸に沿って聞く
時間が何度も前後するようだと、話をする方もしづらいし、聞く方も混乱してしまう。時間軸に沿っていると、話す方も聞く方もやりやすい。ある程度本格的にインタビューをやるならば、あらかじめ相手についての年表を作って、それを手元に置いて質問するのもよい。
・苦労したこと、困難だったことについて聞く
「相手の変化について聞く」にも重なるが、何かを成し遂げた人なら、だいたいそれまでに苦労や困難を経験しているものである。そこで、どのような苦労があったのか、それはどのようにして乗り越えたのかを訊ねる。困難にぶつかり、そこを乗り越えるというのはストーリーのクライマックスだからだ。
さて、本書にはよい質問をするための特別な方法が載っているわけではなく、比較的当たり前というかまっとうなことが書かれている。例えば「本質的で具体的な質問をせよ」というのは、今さら言われるまでもないありきたりのことのように感じられるかもしれない。しかし、大事なのはこうしたことを常に意識して質問するかどうかということで、それによってその後コミュニケーションの技術として質問力を高めていけるかどうかが変わってくると思う。
質問力を高めるためにどういうことを意識すればよいか、自分の中で整理するのによい本。
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