4788510952 質的データ分析法―原理・方法・実践
佐藤 郁哉
新曜社 2008-03-25

by G-Tools

 その1の続きです。第1部では質的データ分析の基本原理について説明されていました。第2部では、いよいよ質的データ分析の実際について説明があり、より具体的な内容になっています。

資料の整理

 資料の整理は、第1部の脱文脈化(データベース化)のところで書いたとおり、分類(似たもの集め)と配列(一定の規則に従って順番に並べる)が基本になります。ある規則にしたがって並べる配列に比べ、分類はその作業を行う人の関心や基準に左右されやすく、配列の方が汎用性が高いです。実際には分類と配列を組み合わせた整理をすることになるでしょう(多くのブログがカテゴリーアーカイブと月別アーカイブを持つように)。また、日付に従った配列だと整理にあまり頭を悩ますこともなく、後で情報を探しやすいので便利。

 また、それぞれのインタビュー記録やフィールドノーツごとに要約を作っておくと効果的とのこと。

コーディング

 コーディングの方法として、帰納的アプローチと演繹的アプローチが紹介されています。帰納的アプローチはデータからコードをつくっていくもので、1行1行テキストを読み込みながらコーディングしていく「オープン・コーディング」、研究がある程度進展し、抽象度の高い少数の概念的カテゴリーに対応するコードを割り当てていく「焦点的コーディング」があります。

 演繹的アプローチはこれとは逆に、既存の理論的枠組みや調査結果から予め概念的カテゴリーとそれに対応する仮のコードをつくっておき、それを割り当てていくというもの。

 どちらか一方を採用するということではなく、データの収集・データの分析・問題の構造化を同時並行的に行いながら(漸次構造化法)、研究の段階やタイプに応じてそれぞれ使い分けることを著者は推奨しています。

分析の方向性を探る

 事例-コードマトリックスを用いることで、以下の4つのタイプの継続的比較法による分析がしやすくなります。

  1. 複数のコード間の比較(複数の概念的カテゴリー同士の比較)
  2. 文書セグメントとコードの比較(データと概念的カテゴリーの比較)
  3. 複数の文書セグメント間の比較(複数のデータ同士の比較)
  4. 複数の事例間の比較

 そして、概念モデルを作る上での注意点として、欠損データのチェック、複数事例による裏づけ、反証事例による検証が挙げられています。

概念モデルをつくる

 概念モデルを作る便利なソフトウェアとしてQDAソフトが紹介されています。これまで京大式カードのようなカードを使って行われていた質的データ分析が、専用のソフトウェアでできるようになりました。

 日本語で使えるQDAソフトとしてMAXQDAが紹介されています。本書の姉妹編として、QDAソフトの活用法を解説した『QDAソフトを活用する実践質的データ分析入門』という本もあり、ウェブからは著者によるMAXQDAのマニュアルもダウンロードできます。

報告書を書く

 最終的に報告書を書くということは、分析したデータをストーリー化(再文脈化)するということです。最後の報告書作成で薄い記述にしないためにも、報告書を書く前の段階から最終的ストーリーにつながるようなアイディアメモを常につけておくことが勧められています。

 具体的なアイディアメモとして、原データ作成時につけるアイディアメモ、日記・日誌、分析作業記録が挙げられています。また、特に概念モデルを作成するのに重要なアイディアメモとして、コードメモ、理論メモ、方法論的メモという3種類の分析メモが紹介されています。

 さて、最後はいよいよストーリー化。データや分析した結果を一本の線のストーリーとして組み立てていくことになります。QDAソフトを使って章立て形式のツリー構造を活用し、ストーリー化していくポイントが紹介されています。

 211ページとそんなに厚い本ではないので、一通り読んだ上で研究の進み具合によって読み返すとよいと思います。QDAソフトはとても便利そうだけど思ったより値が張る。学生ライセンスだとけっこう安く、代理店を通すよりは直に買った方が値段的にはずっとよいです。

 本文中でも紹介しましたが、姉妹本があります。

QDAソフトを活用する実践質的データ分析入門
QDAソフトを活用する実践質的データ分析入門 佐藤 郁哉

新曜社 2008-11-03
売り上げランキング : 79811

Amazonで詳しく見る by G-Tools

こちらもおすすめ!

図書館に訊け!(井上真琴)
「社会調査」のウソ(谷岡一郎)