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質的データ分析法―原理・方法・実践 佐藤 郁哉 新曜社 2008-03-25 by G-Tools |
社会学や心理学、医療・看護、教育など、幅広い分野で分野で質的研究が盛んに行われるようになっています。この本は、そうした質的研究において集めたデータをどのように分析するかに焦点を当てて解説したもので、書名のとおり質的データ分析法について書かれています。質的研究全体については、同じ著者による『フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる』『フィールドワーク―書を持って街へ出よう
』などが参考になります。
本書は2部構成で、第1部「質的データ分析の基本原理」と第2部「質的データ分析の実際」に分かれています。今回の記事ではまず第1部を。
7つのタイプの「薄い記述」
クリフォード・ギアツが「分厚い記述」と言ったのと対比させて、著者は7つのタイプの「薄い記述」というものを示しています。
詳細は本書を参照してもらいたいのですが、どれもけっこうありがち。たとえばキーワード偏重型や要因関連図型なんて、書いた本人はけっこううまく説明した気分になったりするんですよね。
こういう薄い記述をいかに分厚い記述にしていくかというのが本書の内容。
文化の翻訳
著者は、質的研究と翻訳の作業には多くの共通点があるといいます。ごく単純に言ってしまえば、質的研究とは「現場の言葉」(対象者たちの意味世界)を「理論の言葉」(研究者コミュニティーの意味世界)に置き換える作業で、研究者の個人的な意味世界を通して現場の言葉と理論の言葉の往復運動をすること。
定性的コーディング
それではその「文化の翻訳」はどのように行っていくか。最初に行われるのがコーディングという手続きになります。コーディングというのは、文字テキストデータに対して一種の小見出し(コード)をつけていく作業で、元のデータの情報を圧縮して操作しやすくするということになります。また、コードから元の文脈に戻れることも重要。
比較のために、量的調査における定量的コーディングについても書きます。定量的コーディングでは、例えば回答者の性別について、男性だったら1、女性だったら2のように割り当てたり、回答についても「当てはまる・やや当てはまる・どちらともいえない・やや当てはまらない・当てはまらない」に対し、1・2・3・4・5というような数字を割り当てることです。
定量的コーディングではデータを操作しやすくするために数字に置き換えるので、コーディングは事務的な作業で、通常一回きりの手続きです。一方、定性的コーディングではコーディングを通して概念カテゴリーを作っていったり、コードも途中で修正したりと、コーディング自体が一種の分析になります。そのため、コーディングも一回きりではなく、コードと文字テキストの間で何度も往復し、データを整理していきます。
脱文脈化と再文脈化
コードがついた一塊のテキストを文書セグメントと呼びます。脱文脈化というのはセグメントを元の文脈から切り離してデータ分析の素材とすること。再文脈化は二種類あって、まず一つ目はデータベース化すること。データベース化の原理は分類(似たもの集め)と配列(一定の規則に従って順番に並べる)。再文脈化のもう一つはストーリー化で、これは最終的に研究報告書を作成する段階で、報告書という新しい文脈の中にセグメントを引用や要約の形で組み込んでいくこと。
事例-コードマトリックス
最終的な研究報告においては、事実の記述だけではなく「なぜ」という問いに対する説明が必要であり、そういう説明をするにあたって概念モデルを作るようになります。そして、その概念モデルを作るに際し役に立つのが「事例-コードマトリックス」。下の表のように、事例とコードを組み合わせた表を作ります。表の1行目にはコードが入り、1列目に事例が入ります。コードと事例の組み合わせで、表の中には文書セグメントが入ります(下の表では空欄です)。
こうした事例-コードマトリックスを作り、縦方向にコードを中心に分析して事例の特殊性を超えた一般的法則を見ていくやり方と、横方向に事例を中心に分析して事例の個別性を見ていくやり方とを組み合わせて、分析がどちらかに偏らないようにします。
| コード1 | コード2 | コード3 | コード4 | |
| 事例1 | ||||
| 事例2 | ||||
| 事例3 | ||||
| 事例4 |
その2に続きます。
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