4833490986 データが語る原子力の世論
原子力安全システム研究所社会システム研究所
プレジデント社 2004-04

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 1991年、関西電力美浜原発で蒸気発生器が破断、原子炉が自動停止、非常用炉心冷却装置が作動する事故が起きました。この事故を受け、「このような事故を二度と繰り返さないという関西電力の強い決意のもとに」、翌1992年、関西電力の全額出資によってこの本の著者である原子力安全システム研究所が設立されます。

 しかし、本書が出版された2004年4月から4ヵ月後の2004年8月、またも美浜原発で事故が起き、それが原発における国内初の死亡事故となってしまったのだから運命は皮肉です(参考→美浜発電所)。

 本書は、同研究所が行っている継続的な原発世論調査の分析結果をまとめたもの。1993年から2002年までの10年間のデータについて分析されています。原発についての継続的な世論調査は実はあまりないそうで、なかなか貴重な調査といえます。

 以下、この本で紹介されている調査結果をいくつかピックアップ。

【世論の現状】 ※2002年時点において

  • 原子力施設事故へ不安を感じる人は9割

 「非常に不安を感じる」が23%、「かなり不安を感じる」が27%、「少しは不安を感じる」が39%、「全く不安を感じない」が9%。

  • 原子力発電の利用態度、「やむを得ない」が6割以上

 選択肢と、その選択肢を選んだ人の割合は次のとおり。

  1. 安全性には配慮する必要があるが、原子力発電を利用するのがよい(11%)
  2. 安全性には多少不安があるが、現実的には原子力発電を利用するのもやむを得ない(62%)
  3. どんなにコストが高く、また環境破壊が伴うにしても、原子力発電よりも安全な発電に頼るほうがよい(15%)
  4. 不便な生活に甘んじても、原子力発電は利用すべきではない(8%)

 なんだかこの選択肢はかなり曲者。。原発について、「利用する」、「やむを得ないけど利用する」、「別の発電に頼る」、「利用すべきでない」というのは、選択肢が並列的じゃないですし、前振りの文章がつくことで回答者には混乱があるんじゃないでしょうか。

 なるべく2番、1番に回答を落とし込もうとしてんじゃないのかという感じがします。3番なんて、日本語的にもよくわかんなくねーか?? 選択肢の3番が、仮に「太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを増やし、原子力発電は減らしていくほうがよい」という文章であれば、かなり結果は違うのでは。

 原発についての態度と一口に言っても、現実にはいろんな要素があります。老朽化した原発もあればまだ新しい原発もあるし、地震の危険性が大きい地域の原発もあればそうでない原発もあります(ま、日本はどこでも大地震が起きますが)。もうちょっと条件を分けてそれぞれ質問すれば、世論がもっと立体的にわかってくるんじゃないですかね。

 と、いろいろ文句はつけましたが、「原発に不安はあるが、当面利用するのはしかたがない」というのは、他の世論調査の結果などからしても、今の日本のマジョリティーだと思います。

【世論の変化】

  • 原子力に関する意識は10年間でそれほど変わらない

 1993年から2002年というと、もんじゅのナトリウム漏れ事故(1995年)、動燃アスファルト固化処理施設火災爆発事故(1997年)、JCO臨界事故(1999年)、東電の原発トラブル隠し(2002年)と、事故や不祥事に事欠きませんでした。しかしながら、もんじゅやJCOなどの大きな事故の後には原発への不安が高まりますが、しばらくすると元に戻り、10年間の経過を見ると、全体としてはあまり変わらないという結果です。喉もと過ぎれば熱さを忘れる日本人の特性が、データとして実証された?!

【男女差】

  • 男性は知識・関心が高めで、肯定的意見が多め
  • 女性は知識が少なめ、中間回答が多め
  • 男性の方がマスメディア情報への接触が多く、女性の方がお化けを恐れ、迷信を気にする傾向が強い
  • 女性の方が原子力安全パンフレットを見た後の変化が大きい

 マスメディア情報への接触の多さで知識の量も異なるのだから、そこを軸に調べてみるともっといろいろわかりそうです。

【意識のつながり】

  • 無関心層は原子力への不安も不信も少なく、態度が不安定

 数量化Ⅲ類という方法で統計データを分析したところ、回答者全体の傾向からは異なった特徴を持つ人たちがおり、その特徴から無関心層と分類したとのこと。

無関心層では「新聞あまり読まない」や「TVニュースあまり見ない」が多めで、マスメディアの情報への接触が少ない。市民グループの活動に対する関心がとても低く、ゴミ処理場の建設などを住民投票で決めることへの賛成も少ない。原子力の問題に限らず社会的な関心が低いことがうかがえる。原子力に関しては、事故不安が少なめで、大事故が起こりそうだという回答も少ない。国や電力会社に対する不信感も少ない。

 さらに無関心層は、原子力の利用に対する態度に安定性が見られないとのこと。

 無関心層は社会的課題に対する意識がそもそも低そうで、原発に限らず、自分の身に降りかかってこなければ何にしてもこういう態度なんでしょうね。何らかの社会的問題に取り組んでいる人がよく「無関心層の関心を高めないといけない」と言ってたりするんですけれど、無関心層と中間層を区別してアプローチしないとその努力が無駄になるように思います。アプローチするんだったら無関心層よりはまず中間層でしょう。

【原子力への態度別にみる意識の違い】

 全部引用すると長いので、書いてあった中から大まかに抜き出しました。

●とても非好意的層
 環境への関心が高い。危険なこととして環境破壊、原発・放射能を挙げる。科学文明観に否定的。

●やや非好意的層
 チェルノブイリ事故をよく覚えている。原子力について知りたいことは、過去の事故などのマイナス面。原子力の知識については中間的回答。科学文明観にはやや否定的。環境への関心はやや高い。

●中間層
 エネルギー問題は重要だと思っている。心配性でリスクへの関心が高い。お化けや超自然への関心が高い。迷信を気にするほう。原子力については知らないほう。チェルノブイリ事故については少し覚えている程度。原子力について知りたいことはメカニズム、必要性、経済性など基本的なこと。

●やや好意的層
 チェルノブイリ事故について覚えていない。環境関心やや低い。リスクへの関心が小さい。科学文明観はややポジティブ。

●とても好意的層
 科学文明観とてもポジティブ。中間回答が少ない。

 科学技術に対する認識が一番違うようです。一方で、迷信や超自然といったことには中間層の関心が高く、両極は関心が低いという結果になりました。原子力推進・反対の双方の共通点もあるということですね。この結果は興味深い。科学技術に対する認識や環境意識などに絞った研究はないのかな。

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