事例:ゴミ問題

日本中の多くの自治体を悩ますゴミ問題。ある町では、増え続けるゴミと、ゴミ焼却にともなうダイオキシンの問題を解決するために新型で高性能の大型ゴミ焼却炉の導入を決定した。

ゴミの増加にも対応できるし、ダイオキシンも発生させないということで関係者が喜んでいたのも束の間、新たな問題に直面した。この新型焼却炉、高温を保つため24時間ゴミを燃やし続けなくてはならず、常に大量のゴミを必要とするのである。住民にリサイクル意識も根付きはじめ、ゴミの増加に歯止めがかかったところで、今度は「焼却炉を動かし続けるためにゴミが足らなくなる」という問題が出てきたのだ。

分析的思考とシステム思考

このゴミ問題の事例は、システム思考を理解しやすくするために自分で作った事例ですけれど、決して架空の話ではなく、多くの自治体で実際に起きていることのようです。少し前の日経新聞のエコノ探偵団でもこの問題が取り上げられていました。それで、今まで分別していたプラスチックゴミを燃えるゴミの方にまわして、焼却炉で燃やすゴミを増やすなどの対応がされているようですね。焼却炉を動かし続けるためにゴミを増やさないといけないというのだから、本末転倒なことが起きているのです。

ゴミの問題に限らず、ある問題を解決しようとしたら、また別な問題が起きたり、今の問題がさらにひどくなったというのはよく聞く話です。渋滞を解決するために道路を拡張したら、走る車の量がさらに増えてより渋滞が激しくなったとか、害虫を駆除するために農薬を撒いたところ、農薬に対する害虫の耐性が強くなり、よりたくさんの農薬が必要となって人間の健康にも害を及ぼすようになったなど、こうした話は枚挙にいとまがないでしょう。

このように、問題が根本的解決に至らず、別な問題を引き起こしているのは、個別の事象にのみ視点が向いている分析的思考で問題解決を図っているからだというのが著者たちの見方です。そして、分析的思考ではなく、問題を取り巻くシステム全体を見渡したシステム思考で問題解決を図ろうということを主張しています。

木を見て森を見ずではなく、森全体を見渡そうというようなことは昔から言われていることだと思いますが、システム思考のおもしろいところは、単なるスローガンで終わらず、問題解決のための思考のツールを提示していることと、問題が起きている状況をシステム原型として類型化しているところです。

システム思考のツール

システム思考のツールとしては、時系列変化パターングラフというものと、ループ図というものが紹介されています。時系列変化パターングラフは、ものごとの変化をグラフ化して、時系列で表すというもの。何か特別すごいツールではないですが、ものごとの浮き沈みをグラフで図示化すると、ある特徴を持ったパターンを見いだすことが容易になります。

ループ図は、課題となっているシステムの要素をすべて書き出し、矢印で繋いで、どのような因果関係が働いているかを見るもの。これによりシステムの構造を明らかにし、小さな力で大きく構造を変えられる介入点(レバレッジ・ポイント)を探すというのが、システム思考による問題解決の基本のようです。実際のループ図を見たり、自分でループ図を描いてみないとちょっとイメージしにくいかもしれませんね。

システム原型

共有地の悲劇、成長の限界、エスカレート、強者はますます強く、などなど類型化された問題構造がシステム原型として、ループ図付きで何種類か紹介されています。

例えば、共有地の悲劇は「誰でも自由に利用できる(オープンアクセス)状態にある共有資源(出入り自由な放牧場や漁場など)が、管理がうまくいかないために、過剰に摂取され資源の劣化が起ること」(EICネット)ですが、これは環境問題などでよく使われる概念ですね。一見無関係に見えるそれぞれ別の問題でも、構造的には同じ問題ということがあります。その場合、ある問題で有効だった問題解決の手法が、別のところでも有効に機能する可能性があります。ポイントは、構造の種類を見抜くことと、レバレッジ・ポイントを探し当てることでしょう。

この本ではシステム思考の概要が紹介されていて、システム思考による具体的な問題解決の手法までは説明されていません。もっと詳しく書かれた本を読んで、システム思考についてちょっと勉強してみようと思います。

4061498959 入門! システム思考 (講談社現代新書 1895)
枝廣 淳子 内藤 耕
講談社 2007-06-21

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