4166601105 「社会調査」のウソ~リサーチ・リテラシーのすすめ
谷岡 一郎
文藝春秋 2000-06

by G-Tools

【ロサンゼルス4日=共同】(略)米紙ロサンゼルス・タイムズが4日発表した世論調査でこんな結果が出た。9月下旬、全米で1600人を対象に行ったこの調査では、健在の4人の前、元大統領のうちだれを支持するか、という質問に対し、35%がカーター氏、22%がレーガン氏、20%がニクソン氏、10%がフォード氏と答えた。(略)(朝日新聞 1991.11.16)

 初っ端から問題が出される。上記の記事で紹介されている調査のおかしいところはどこか?

 この4人のうち、カーターだけが民主党で、残り3人は共和党であるため、共和党支持者の票は割れ、民主党支持者の選択肢はカーターしかない。このような特定の選択肢が上位に来るような選択肢の作り方を、「forced choice(強制的選択)」というそうだ。

 「世の中に蔓延している社会調査の過半数はゴミである」と断じている本書では、こんな感じででたらめな社会調査を次々と斬っていく。過激な文体がやや鼻につかないでもないが、本書を読み終える頃にはマスコミが伝える数字の見方もだいぶ変わっているだろう。

 上記の例のように、ある結果を出すために恣意的に質問や選択肢を作っている例もたくさん紹介されているが、間違いのためにでたらめな結果が出される例も紹介されている。例えば、相関関係と因果関係についてである。

相関関係:変数の一方(X)が変化するにつれ、他の変数Yが同時に変化する関係
因果関係:変数の一方(X)の変化が、他の変数(Y)の変化を引き起こす、原因と結果の関係

○逆方向の因果

 ダイエット食品の効用に疑問を持ったマリエ・アンゾ博士は、ランダムに選んだ男女1000人ずつ、計2000人に一日に食べるダイエット食品の回数と量を尋ねてみた。ついでに各自の肥満度も測定してみた。その結果次のことが判明した。

a. ダイエット食品を食べる回数が多ければ多いほど、肥満度が高い。
b. ダイエット食品を食べる量が多ければ多いほど、肥満度が高い。

 この結論のおかしいところは?

○隠れた変数/真の原因

 コーヒーを一日に三杯以上飲む人は、飲まない人に比べて、心臓病で死ぬ確率が三倍以上に上ることが、C大学(関東地方)医学部の××教授の調べでわかった(カフェインの取り過ぎによるものと思われる)。

 疑問点は?

○スプリアス効果

 複数の変数の表面上の相関関係が、どれも1つの共通の原因から生じていることをスプリアス効果という。わかりやすい例として、「家にある灰皿の数と家族の誰かが肺がんにかかる率の関係」が挙げられている。

○単なる偶然

 まず純粋な偶然について。社会科学における統計的な有意さは通常95%のため、20回に1回程度は偶然があってもおかしくないそうだ。また、純粋な偶然以外にも、時間的変化を考慮した場合、何ら関係のない事象どうしに相関が生じることはよくあるとのこと。

 その他、マスコミの調査における印象操作の問題や、アンケート調査をする上でのサンプリングや母集団についてなど実例を元に説明してあるので、これから何か調査をしようと考えている人は一読の価値あり。また、メディアの情報にだまされたくない人も、メディアリテラシーを高めるために読んでおくとよいかも。